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2017年 10月 23日

AI難民

ディープラーニング(深層学習)という人間の脳の神経回路の働きを模した機能を持つAI(人工知能)は、いったいどれほど進化していくのか?

昨年3月に、グーグル社の開発したAI「アルファ碁」が、世界トップクラスの棋士を相手に完勝。以来、AI談義が盛んになった。しかし国立情報学研究所が東大合格を狙って開発してきたAI「東ロボくん」は、去る11月に「諦める」と宣言。数学や世界史など蓄積した知識や論理を扱う科目は得意でも、英語や国語など読解力を必要とする科目は、どうしても合格域に届かないという。

「な~んだ、AIもたいしたことはない」と安心するなかれ。「東ロボ君」はこれから、各科目で開発した技術を社会で応用していく。たとえば、得意な数学の能力を産業に応用していくのだという。この手の能力は侮れない。多種多様なAIを搭載したロボットにより、過去の産業革命を上回る激変が起こる可能性は高い。

そうなれば、人間の知的営みは大きな影響を受け、仕事の仕方も変わる。日本では政府の肝いりで「働き方改革」の実現に取り組んでいるが、これからのAIの絶大な影響力を考慮しているのかどうか。

多くの職種がAIで代替されることになれば、その方面での競争はいよいよ激化する。同業他社との競争に勝つには、より高性能のAIを導入しなければならない。会社は人件費を圧縮してでもAIの性能向上に走る。しかもAIには長時間労働の問題がないので、競争はおのずと激化する。結果として、世界中で生まれるのは大量の失業者、すなわち「AI難民」である。

日本を含む世界の主な国々は、AI開発へ巨額の資金を投入している。それが将来、どんな歪んだ世の中を築くことになるかが、十分に配慮されているとは言えない。遺伝子工学など生命を操作する領域では厳しい倫理基準が設けられているように、AI開発においても同様の基準は必要だろう(日本では人工知能学会が開発研究者のための倫理基準案を提出中)。

人間は完成されてなどいない。AIと同様、つねに開発中である。いつしか人間がAIに凌駕されないためにも、機械には真似のできない能力を磨き高めるよう心がけたい。たとえば、他者を思い遣り、相手の心を汲み取って行動する能力もそうだ。
察し合いの文化が、日本の職人の世界にはあった。

「親方、あれどうしやしょ」
「おう、あれか。ちょいとなにしといてくれ」

これで通じなければ弟子は破門となる。AIにこの会話がわかろうものか。

面倒を厭わず、苦労を嫌わないという能力はどうであろう。辛くしんどいプロセスを経てこそ、成し遂げられたときの喜びは大きい。そうした経験を積み重ねれば、耐える能力は鍛えられる。そうした能力をAIは身につけられるだろうか。

未来はけっして遠くない。「AI難民」を出さないためにも、適切な倫理基準を策定するだけでなく、自分自身の能力向上に挑む気概を持ちたいものである。

(次回は3月第2週号掲載)

maruyama

〈プロフィル〉 丸山敏秋(まるやま・としあき) 1953年、東京都に生まれる。筑波大学大学院哲学思想研究科修了(文学博士)。社団法人倫理研究所理事長。著書に『「いのち」とつながる喜び』(講談社)、『今日もきっといいことがある』(新世書房)など多数。


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