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2017年 03月 29日

宝塚のメンバーだからこそ作れる世界もある

「ガチ!」BOUT. 231

 

和央ようか

 

現在、ブロードウェイでロングラン上演中の「シカゴ(CHICAGO)」の宝塚版が7月20日から24日まで、リンカーンセンター・フェスティバルで上演される。同作は、2014年、宝塚歌劇100周年を祝して制作され日本で7万人を動員した、世界初女性キャストのみの「シカゴ」だ。宝塚歌劇団を卒業した歴代トップスターとダンサーらが出演するOGバージョンで、メーンキャストの一人、ヴェルマ役を和央ようかさんが演じる。2000年から6年、宙組の男役トップスターとして多くの観客を魅了した和央さん。そんな彼女に、今回のニューヨーク公演についてお話を伺った。
(聞き手・高橋克明)

 

宝塚OG版「シカゴ」、NYで公演

宝塚版「シカゴ」が、いよいよ今夏リンカーンセンターで公演されます。公演が決定した時の最初の感想を聞かせてください。

和央 まさかニューヨークで、日本語版の日本人キャストの「シカゴ」ができるなんて思ったこともありませんでしたし、しかも全員女性の宝塚バージョンで、リンカーンセンターでなんて、ありえないシチュエーションだらけで、本当にびっくりしてます。私もこの街に住んでいて、よくリンカーンセンターの前を通るのですけれど、通るたびに「本当に私がここの舞台に立たせていただいてもいいのかな」と思いながら見上げてます(笑)。あまりにも光栄すぎることなので、緊張しますが、でも、せっかくのチャンスなので、楽しもうって今は思います。

今までの舞台とはまた違った緊張でしょうか。

和央 舞台に立つ際はいつも緊張しますけど、でも特にここは大きな劇場ですし、何か、こう…いろいろな意味で緊張と感動が交互にずっとやってくる、不思議な気持ちですね。

同時期に10ブロックの距離でブロードウェイの方でも今年20周年を迎えた「シカゴ」をやっていますが…。

和央 (お客さまは)観ようと思ってくだされば、どちらも観ることができるわけですから。そういった意味でも、ピリッと気が引き締まる思いではありますね。

やはり意識はされますか。

和央 うーん…意識はしてないですけれども、20年間続いてるあのブロードウェイの「シカゴ」と同じ街でさせていただけるので、それにふさわしくあるよう、頑張らなければという思いはあります。(それ以前に)エンターテインメントの本場のニューヨークで、させていただけるわけですから。それに、やっぱりこの街には日本人の方も多く住んでいらっしゃるので(ブロードウェイ版の)「シカゴ」を観たその方たちにも「宝塚版も良かったね」って思っていただきたいです。そういった意味でも日本を代表して来たという気持ちではありますね。

作品自体、宝塚の100周年記念で制作されたものだけに、今回は往年のオールスターキャストが集結します。今回について他のキャストの皆さんとはお話されましたか。

和央 こちらに住んでいるので、まだ直接は話してないんですけれど、みんな興奮してるに違いないです。それはもうもちろん。宝塚という日本だけの文化もお見せする良い機会ですしね。

宝塚時代には男役だった和央さんが、今回、ヴェルマを演じます。やりづらさを感じたりはしませんか。

和央 それは特に感じません。ただ、みんなが集まって、元男役だった他の方たちが(女性役を)されるを見るのは新鮮ですし、面白いと思います。自分のことはさておいて。(笑)

(ここで宝塚マニアの弊社カメラマンが割って入って)宝塚時代の和央さんは、女役ってないですよね、一路真輝さんは(男役にもかかわらず)女役もやられてましたが。 

和央 私はほとんど、ないですね。新人公演の時に、一度だけ(「ベルサイユのばら」の)オスカルをやったことがあるくらいで。

(カメラマン)  日本にいた時は相当、観に行ってまして(興奮気味) 

和央 そうなんですか。私の舞台もご覧になられました?

(カメラマン) それが20年以上、こっちなので。当時は大浦みずきさんの時代で、和央さんは初舞台を踏まれたくらいの…。

和央 私、大浦みずきさんに憧れて宝塚入ったんですよ。大浦さんのトップのお披露目公演が私の初舞台で。

(カメラマン) あ。じゃあ、観てますね、アタシ!

和央 そうなんですねー。あの時は…。

※ ここからしばらくの間、二人で楽しそうに宝塚話で盛り上がる。インタビュアー、ひとり置いていかれる。

あのぉ(大声)。…今回の宝塚版と、ブロードウェイ版「シカゴ」の一番の違いはどこでしょう。

和央 全く一緒です。

(カメラマン) ですよねー。何を聞いてるんでしょうね。ホント、スミマセン。

………。

和央 (落ち込むインタビュアーを見て、優しく、)シカゴって独特のプロダクションで、世界各国どの言語であっても、全く同じものを観ることができるのが大きな特徴なんです。同じ間奏中に、同じセリフを入れるから、訳が長い日本語の場合は多少難しかったり、とかはあるんですけれど、でも、絶対にその間奏の間に入れこむ。なので、どこで観ても変わりなく楽しむことができるんです。私、韓国語版も観ましたけど、同じでしたね。衣装もブロードウェイからお借りしてるので、本当に同じなんです。

なるほど。

和央 ただ、見た目は同じでも、宝塚の面白いところは、醸し出す世界観の匂いというか、空気は違ってくると思います。宝塚のみんながそろった時のあの独特の匂いというか、舞台上の空気は、多分(創設者の)小林一三先生の言葉に沿ってやってきたからこそ出る雰囲気なので。シカゴって、どこか危険で、セクシーで、バイオレンスじゃないですか。宝塚本来の、いわゆる「ベルサイユのばら」的なものとはちょっと相反しそうではあるんです。コスチュームも宝塚は豪華で着飾って、「シカゴ」はある意味全部削ぎ落とした衣装で。そのあたりがどう成り立つんだろうって興味はありましたね。

日本で初演をされた時にはいかがでしたか。

和央 初演の時に感じたのは「シカゴ」の衣装を着ても、「シカゴ」のいわゆる品のないセリフを言っても、どこか、その清楚(せいそ)な宝塚らしさが残っていて。同じ衣装、同じセリフでも、やっぱり「宝塚」なんです。不思議だなぁって。なので、ブロードウェイ版にも、従来の男性と女性版にもない、一つのスタイルが出来上がっていると思います。女役が女性よりも女性らしく、男役が女性が理想とする男性像をずっと演じ続けてきた集団だからこそ、作り上げられる世界もあって。その人間たちがやる「シカゴ」って、出演者みんな意識はしてないと思うけど、やっぱり違うんですよね。もし見比べていただけるのであれば、ポイントはそのあたりかなって思います。

それでは、現地のニューヨーカーには、どこを感じてほしいでしょう。

和央 こちらにはない「歌舞伎」というものが日本にあるように、日本にしかない「宝塚」という文化を堪能してほしいと思います。(演じる)私たちは、ブロードウェイで20年もの間、愛され続けた「シカゴ」を日本語で挑戦させていただくので、女性だけで演じるシカゴを楽しんでいただけたらうれしいなぁと思います。

なるほど。和央さんは現在、ニューヨークに住まれて2年くらいとお聞きしました。一番楽しい時期なのでは。

和央 でも、あんまりいないんですよ。(世界中)あっちこっち行って。日本にもよく行きますけど、忙しくて、あんまり(一つの国に)滞在できないんです。

ニューヨークはお好きですか。

和央 大好きです! ……寒い冬以外は。(笑)

寒い時期は、寒いのを通り越して痛いくらいですよね。

和央 本当にヤダ。 風が冷たく、強すぎて動けないです。(笑)

今の表情で、本当に嫌なことが伝わってきました。(笑)

和央 あはは。でも、それ以外は大好きなんですよ。

それでは最後に、ニューヨークに住む日本人の読者にメッセージをお願いします。

和央 ニューヨークって私にとっては最高にセクシーな街なんです。とてもエネルギッシュだし、生きがいがあるし。でも、同時にタフな街でもあると思うんですね。ここに住むってことは目的や生きがいがあれば、最高の場所だと思います。逆に、何もやることがなくなったら、住んでいられなくなる街。だから、楽しくて、でも、厳しくて。なので、この街で皆さんが頑張っているように、私もここで生きがいを見つけて頑張りたいと思います。

 

★インタビューの舞台裏★ → ameblo.jp/matenrounikki/entry-12168543864.html

 

和央ようか(わお・ようか)/TAKAKO 職業:女優
1988年宝塚歌劇団入団。94年のロンドン公演、98年の香港公演に参加。雪組を経て2000年、宙組トップスターに就任。04年には「ファントム」で主役を演じ、その見事な歌唱力と演技力で大絶賛を浴びる。同年、第29回菊田一夫演技賞を受賞。06年、「NEVER SAY GOODBYE」にて宝塚歌劇団を退団。退団後は「CHICAGO」や「DRACULA」等、数々の舞台でも活躍中。
公式サイト:www.yokawao.com/

(2016年6月11日号掲載)

■本紙6月18日号で作品情報を掲載


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